
柏餅と言えば5月5日の端午の節句を象徴する和菓子です。
平たく丸めた固めの餅に餡が挟まった和菓子を端午の節句に口にする事が現在の習わしとなっていますが、身近な行事となっている風習は知られていない一面がたくさんあります。
そのうちの1つとして挙げられる事が柏餅の「サルトリイバラ」です。
サルトリイバラとは?
「サルトリイバラ」は多年生植物で、別名「ガンタチイバラ」や「カカラ」とも呼ばれてます。
草丈は70cmから350cmほど這うように伸び、茎の所々に棘があるところが特徴的です。
4月から5月頃になると淡い黄色い花を多数咲かせ、秋になるにつれて直径7mm程の丸い赤色の果実をつけます。
黒と水色の美しい羽を持つ蝶のルリタテハの幼虫の食草としても知られていますが、この植物の葉が柏餅の葉として用いられている事はあまり知られていません。
なぜ、サルトリイバラの葉が使われているのに柏?
そもそも和菓子の名称に入っている柏とはヒノキ科の植物であるコノテガシワです。
コノテガシワはいわゆる針葉樹で、文字通り針のように細長い葉は食べ物を包む事に適していません。
それが何故「柏餅」の名前になったかと言えば本来の植物と混同してしまったからに尽きます。
端午の節句に食べる餅に用いられた本来の植物は「槲」というブナ科の樹木です。
柏と同じく「かしわ」と呼ぶこの樹木はいつしか柏と混同されるようになり、気が付けば現在の名称に落ち着きました。
それでも厳密な名称は「槲餅」である事に変わりありません。
槲の葉は円形あるいは楕円形をしており、手のひらのような独特な形をしています。
つまるところ市販されている餅に使用されている葉と同様というわけです。
柏の葉を使っていたのは江戸周辺だけ!
実のところ端午の節句の習わしが始まった江戸時代から樹木の葉を使っていたのは江戸周辺だけでした。
他の地域では「サルトリイバラ」をはじめ、モクレン科の落葉高木である「ホオノキ」やクスノキ科の常緑高木である「ニッケイ」を用いていました。
その理由は簡単で、他の地域では槲以外の葉が入手しやすかったからです。
反対に江戸周辺は槲の葉が手に入りやすかったわけですが、サルトリイバラと槲の葉では前者のほうが高い評価を得ています。
まとめ
元々男子の健康を祝う端午の節句に新芽がつくまで葉を落とさない槲の特徴をかけて商人たちは縁起物として広めましたが、柏餅においては葉は香りづけや和菓子の風味のためにあるものです。
「サルトリイバラ」は根や茎が薬に使われるほど匂いや味がありますが槲には食べ物の味を左右するほどの匂いはなかったため、評価はいまいちだったそうです。