
よく、目は口ほどにものを言うといった表現がなされます。これはそのとおりで、他人を見たときは、その人の表情や仕草を見てどんな心理状態なのかを判断するのが通例です。その人の口から発する言葉を聞くまでもなく、機嫌がいいとか、忙しそうだとか、というように気持ちを推しはかるのが普通ではありませんか。
人間が他の動物と違うのは言葉を持っている点であり、これが人間のコミュニケーションを円滑にしていることは、あらためて言うまでもありません。
人は言葉以外でも相手を判断する
メールやSNSも人間が言葉を持っているからこそ使えるわけです。だからこそ言語でのメッセージ交換が可能となっています。しかし、実際には人間のコミュニケーションというのは、言葉に頼るよりも非言語的なコミュニケーションが多いのです。
ノンバーバルコミュニケーションという用語がありますが、たとえば手ぶりや身ぶり、表情、声のトーン、しゃべり方のスピード、さらには服装や髪型なども、ほかの人に何らかのメッセージを送っているものなのです。会話をしているときも、相手の人がずっとうつむいているのと、しっかり私の顔を見ながら聞いてくれているときとでは、受ける印象が全く違ってきます。ほかにもノンバーバルコミュニケーションの面白い具体例があります。
握手をすると嘘をつく人が減る実験
トルステン・ハーフェナー氏の書いた『心を上手に透視する方法』には、握手をすると嘘をつく人が減る?というものがあります。筆者はある実験を行って、一度握手をした後は、嘘をつく確率が劇的に下がったと報告しているのです。例ですが、選挙ともなると候補者が街頭に出て有権者と握手をする行動に出ることが多くなります。握手をすることで心理的な一体感が生まれてきてお互いに連帯感がわいてくることで、有権者にしてみれば、この人に投票しようという気持ちが高まってくるのでしょう。
テクノロジーがこんなに発達した時代になっても、いまだに握手をする作戦を時間をかけて展開している候補者が多いのは、これが効果的だからなのです。まさにノンバーバルコミュニケーションの好例で、政策も公約も信条も全く語らずして得票行動に結び付けるのですから、考えようによってはいかに言語以外のコミュニケーションが有効に働くのかを如実に示しているのだと思います。
最後に
握手をすると嘘をつく人が減るというのも、その心理が働くメカニズムは全く同じではないでしょうか。日本には握手をする習慣はないのですが、もっと握手の習慣を増やしていってもいいのではないかと私は考えています。